θ 11番ホームの妖精 鏡仕掛けの乙女たち

【ネタバレ注意】

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あらすじ
 
鏡状門の開発によりC.D.鉄道網が実用化され、世界が数時間で結ばれる時代。東京駅上空2200mに浮かぶ幻の第11番ホームに独り勤務する全身義体の少女T・Bは、150年前の事件で別れた仲間との再会を願っていた。時折ワケありの乗客が降り立つばかりの閑散とした駅にある日、謎の車輌が高速で突進してくるという警報が…“スワロウテイル”世界の裏の出来事を描いたデビュー書籍に未収録作を加えた連作完全版!
 

 

 
【ネタバレ注意】でお願いします。
 
 
電撃文庫版は既読です。
これはハヤカワ文庫から出版されたもので、電撃文庫版に未収録作を加えた完全版という扱いです。
 
電撃文庫版は2008年4月発売で、たしか発売してすぐ読んだはずです。「面白かった」という記憶はあるんですが、具体的な中身はいい感じに忘れてまして、今回改めて読んで、ああこういう設定だったとだんだんと思い出してきて、やっぱり面白いなあと思った次第です。
内容は濃く、SF設定がガンガンと出てきますが、私もそれは大好物ですが、さておき。重い話となるところを全身義体の少女であるT・B、サイボーグ狼の義経、11番ホームを管理しているAIのアリス、彼女らの会話のノリというかT・Bののほほんとしたスタンスがほどよく緊張感を和らげてくれて、楽しく読めます。まあでも、内容はやっぱりエグいとこもあるけどな!
 
では、各話について。
 
 
【Ticket01:鏡と狼と人工知能
 
「そういうことはすぐに言ってくださいと教えたじゃないですか!」
 
11番ホームに暴走車両が突っ込んでくる、というところから始まるこの話。世界観説明とキャラ紹介を兼ねておりますが、どこが一番良かったでしょうか。T・Bと義経とアリスの会話劇? 彼女を拉致されたという青年の話? 軍用サイボーグとの戦闘? 鏡状門に巻き込まれたT・Bの過去? いえいえやっぱりここはレベル9開放のシーンでしょう。読んでて、コレコレコレ! そうコレが読みたかった! と思わず口に出しそうなほど好きなシーンです。
 
制限付きというものはカチリと嵌まると最高に燃えます。
 
 
【Ticket02:蘭とパンダと盲目の妖精】
 
「愛されたいーー違いますか?」
 
良い話でした。
この話を読み終わってもう1回、「0」のところを読むと、ああそういうことかと。なんて芯の強い女性なんだろう佳香さん。これで12歳とはなんて大人びた……。
今回も11番ホームにお客様がやってきます。この場所って宿泊施設や保養施設まで完備しているとは想像してませんでした。もっと寂れたところだとばかり……。
花の品評会というイベントを控えた「パンダ」と「盲目の妖精」という二人の想いを対比して描いているんですけど、佳香さんが大物過ぎて相手が霞んでしまうレベル。これは義経が惚れるのも分かる。
 
こういう評価のされ方もいいなあ。
 
 
【Ticket03:魔女とバニラとショートホープ】
 
「だからお前はバカでおてんばでお人好しで手に負えないってんだよ」
 
この三話がダントツで面白かったです。
またもや11番ホームに荷物がやってきます。今回はめちゃくちゃすごいフロッピーディスク(←なんて雑な理解)。それが「電脳妖精」と偉い方達の思惑とが複雑に交わり大変なことに。
今までの比じゃないくらいSF設定をぶち込んでくれてるけどなにそれ美味しい。今までにない酷い状況が後半にいくに従ってさらに酷いことに。と同時に「電脳妖精」の過去、想いが明らかになり、T・Bと義経の説得により心変わりしてからが最高潮。ページを繰る手が止まりませんでした。
 
世界規模の問題が家族という単位によって解決されるというのが大好き。
 
 
やっぱり面白い話は何回読んでも面白いです。また数年後に改めて読んでみると、違った感想になるのかなーと思ったりします。
 
一番好きなキャラは人工知能のアリス。人工知能大好物です。