落第騎士の英雄譚9
【ネタバレ注意】
七星剣武祭の決勝戦を丸々1冊使って描いたなんとも贅沢な一品。
いやー良かった。すごく良かった。一切の妥協なく限界までふりしぼった感がすごい。まさしく決勝戦にふさわしい闘いでした。
前巻のラストの引きから大いに期待していたんですが、ものの見事に期待を上回ってくれるこの出来に大満足。この二人の全力全開のバトルが見たかった!
決勝戦は一輝とステラの闘いということで、1巻の戦闘からここまで来て、盛り上がらないわけがありません。あの時とは二人の関係も実力も変わってしまいしたが、出会ったばかりの二人を知っているからこそ、どちらにも勝って欲しい気持ちでいっぱいに。
さて、まずは一輝が決勝に向けて身体を暖めるために模擬戦をするところから始まるわけですが、もうこの時点からしてすでに熱い。かつて闘った強敵達との再戦。そのうえ、以前よりも強さを増してかかってくるわけで。さらにそれすらも圧倒するほど一輝が成長しているなんて。特に《雷切》東堂刀華の新技をここで出してくるか! 学内戦では出すそぶりすらなかったというのに。前哨戦のはずがなんて盛り上がり。
《雷切》に続き、《七星剣王》、《風の剣帝》までも出てきて、ここから続く決勝戦への期待をさらに高めてくれました。
そして、ついに始まる終章(前)約束の刻。
戦闘開始前の実況・入場・演出と。この辺りからバトルの決着まで鳥肌が止まりませんでした。一輝とステラの、お互いを知っているからこその立ち回り、相手の強さに対する信頼、自分の実力の未熟さを認め、相手が恋人であろうと、いや恋人だからこそ勝利に対して貪欲であり、出し惜しみのない絶技と暴力の応酬。戦闘描写は二人の動きをイメージしやすく、それでいてスピード感もあり、観客・実況による解説もバトルに水を差すことなく、盛り上げる一助となって。100ページを超える長さなのにまったく中弛みすることなく、最後までトップギアで駆け抜けて非常に大満足です。
強くなった理由がお互いの存在があったからこそってのがいい。一進一退の攻防、ただ単純に技を繰り出すのではなく、そこに駆け引きがあるのがいい。闘いの中で互いが成長し続け、Fランク騎士であった一輝が限界を迎え、絶望的な状況から復活を遂げるのがいい。バトルの過程にも結末にも一切の不満はありませんでした!
で、終章(後)並び立つ者。
1巻が発売された当初からこの巻まで、ずーっと好みの展開が続いていて、ずーっと好きでした。
最後にツーショットの写真の挿絵を持ってくるなんて最高のラスト・大団円ですね。
・・・・・・と思ってましたあとがきを読むまでは。なんと次はヴァーミリオン皇国訪問編ですか。楽しみ。章タイトルに終章なんてあるから、この巻で終わってしまうのかとつい。
ともかく、今回の盛り上がりに負けないくらい面白いのを次回も期待しています。
それでは。